片側胸水を認めた時のマネジメントを考えてみます
①初期評価/鑑別疾患
②胸腔穿刺
③ドレーン留置や外科的介入が必要か
①初期評価
レントゲンで片肺が真っ白というときは、まずは本当に胸水かということを確認します。鑑別は無気肺であり必ずしも白いから胸水だとはならない点が注意です。無気肺の場合は患側に気管が引っ張られるため偏位していることがあります。
ベッドサイドでエコーで確認することが重要です。
片側胸水の鑑別疾患を列挙します
片側胸水であったとしてもまずは漏出性と滲出性に分けて鑑別を挙げることが重要です。
鑑別を考えながら胸水マネジメントのアルゴリズムに従って評価をします
心不全や低アルブミン血症による漏出性胸水であれば基本は両側性です
明らかな片側性であれば胸腔穿刺が妥当と考えられます
②胸腔穿刺
手技の方法などは割愛し、提出すべき検査、Light’s criteriaを確認します
・提出する検査
細胞数/分画, 生化学(TP, LDH)
グルコース:<60mg/dLで肺炎随伴性/膿胸、悪性疾患の可能性
Tg/コレステロール:黄白色-白色の場合に乳糜胸を考慮し提出
アミラーゼ:膵性胸水を疑う場合に提出
pH:<7.2では肺炎随伴性/膿胸, リウマチ性, 結核性, 悪性疾患, ループスなど考慮
鏡検, 一般培養
抗酸菌塗抹/PCR/培養, ADA:結核性を疑う場合に提出(別記)
細胞診/セルブロック:50-75ml必要, 報告はまちまちだが診断精度は60%(別記)
それぞれ疑わしい病態に対して検査を提出する必要があります。
片側胸水であれば悪性胸水や結核性胸水は考慮しないといけないため
細胞数/分画, TP, LDH, pH, Gram染色, 一般培養, 細胞診, 抗酸菌塗抹/PCR/培養, ADA, 細胞診/セルブロックを提出してしまうのはアリかもしれません(穿刺は侵襲的ですし、結果まで時間がかかるものもあるので後で出しとけばよかったとなる方が悲しいです)
・Light’s criteria
胸水蛋白/血清蛋白>0.5
胸水LDH/血清LDH>0.6
胸水LDH>血清LDH正常上限の2/3
これらのうちどれか1つが該当すれば滲出性と診断します
これは感度98%と高いですが、特異度は83%と報告されており注意が必要です
特に心不全による胸水で15-20%で滲出性に分類されることがあり、多くは利尿薬の使用が原因と言われています。
③持続ドレナージや外科的介入が必要か
肺炎随伴性胸水や膿胸のドレナージの必要性に関してはLightの分類やACCP分類を参照し検討します
Lightの分類(Chest 1995;108:299-301.)によると、
胸水pH<7.0、糖<40mg/dL、グラム染色が陽性、多房性胸水、明らかに膿性などの所見があればドレナージの適応とされている
またACCP分類(Respiration 2008;75:241-250.)では、
胸水が大量(胸郭の半分を超える)、多房性で胸膜肥厚を伴う、胸水pH<7.2、細菌学的検査が陽性、膿性などの所見がドレナージの適応とされています
明らかな膿胸やドレナージがうまくいかない肺炎随伴性胸水(多房性)では原則として外科的介入について検討する必要があります。まず診断時に外科に一報するのが良いと思います。
ウロキナーゼの胸腔内投与は多房性胸水での外科的介入を減らす可能性がありますが適応外使用です。
コメント