研修医の時、カンファレンスで「じゃあこの心電図を読んでください」と言われることがありますよね。こういうときは“型どおり”に所見を述べることが重要です。”ST上昇は〜”などと始めてしまうと上級医のため息が聞こえてきます。
細かい部分は色々あると思いますが一例を紹介します
【心電図を読む順序】
①心拍数とリズム
②P波/PQ間隔/QRS波/ST/T波/QT(左から順番に)
①心拍数とリズム
心拍数 HR:
大きい1マスごとに波形が出現すれば心拍数は300回/分です。そのため大きい3マスごとに波形が出現していれば300÷3=100回/分です。HR60-100回/分が正常範囲ですので、波形は3-5マスおきに出ていればOKです。
リズム:
洞調律の定義を理解することが重要です。適当に洞調律ですと言ってはいけません。
洞調律であるには「P波がQRS波に先行し、Ⅰ,ⅡでP波が常に陽性で同じ形」である必要があります。洞結節がペースメーカーとなっている場合は自ずとそのようになると思います。右房から左室方向へ電気が流れるとイメージすればわかりやすいでしょう。
P波がQRS波に先行していない→房室ブロック、PVCなど
P波がはっきりしない→心房細動など上室性頻拍など
を想起する
②P波/PQ間隔/QRS波/ST-T/QT(左から順番に)
P波:
Ⅰ,Ⅱで陽性、幅3mm未満(小さい3マス)、高さ2.5mm未満(小さい2.5マス)がざっくりとした正常範囲です
異常所見としては
左房調律ではⅠで陰性のP波となり(左軸偏位のイメージ)、異所性心房調律や房室結節調律の時はⅡ,Ⅲ,aVFで陰性となることがあります(下から上にいくイメージ)。
また左房拡大があればP波はⅠやⅡでP波の幅が3mm以上となり、V1のP波の陰性部分が大きくなります。右房負荷ではⅡ,Ⅲ,aVFでP波の高さが2.5mm以上になります。
PQ間隔:
3-5mm(小さい3-5マス)が正常範囲です
短すぎるとΔ波などの短絡を疑い、長いと房室ブロックを疑います
QRS波:
電気軸、QRS幅、abnormal Q、R波の増高、左室高電位などを見ます
電気軸は心臓の起電力の方向を表しており、ⅠとaVFで陽性であれば正常です
右軸偏位をきたす例としては右室肥大、完全右脚ブロック、左脚後枝ブロック
左軸偏位をきたす例としては左室肥大、左脚前枝ブロックなどがあります
QRS幅は1.5-2.5mm(小さい1.5-2.5マス)が正常範囲でnarrow QRSと表現されます。それ以上だとwide QRSと言われ脚ブロック、PVC、補充調律などで見られる所見です。
R波の高さの1/4以上のQ波をabnormal Q波と言います。aVRでは基本陰性なので正常所見ですが、それ以外の誘導で認められるかを確認する必要があります。
陳旧性心筋梗塞などを示唆する所見でありⅡ,Ⅲ,aVFやⅠ,aVL,V5-6に連続して認められる場合は異常と考えますが、ⅢとaVL単独のabnormal Qは正常範囲というルールがありややこしいです。
胸部誘導のR波の増高をチェックします。正常であればV1から6に向けてR波は増高しS波は減高するという方向性になります。この時R/Sが<1から>1に変化する部分を移行帯といい、V2-4の間にあることが一般的です。V1-3でR波の増高不良があればpoor R progressionといい前壁梗塞を疑い、むしろR波が増高している場合はtall Rといい後壁梗塞を疑います。移行帯をちゃんとチェックすれば気がつける所見です。
QRS電位も注目します
左室高電位はSV1+RV5 or V6≧35mm、RV5 or V6≧26と定義されています。
低電位は肢誘導で振幅が5mm以下、胸部誘導の全てで10mm以下と定義されています。それぞれチェックします。
ST-T:
再分極過程を表す部分です。ST低下と上昇、陰性T波がないかを確認します。
ST判定はQRSの立ち上がる直前のPQ部分を基準とします。
T波はⅠ,Ⅱ,V2-6では通常陽性となります。
QT間隔:
QTがRRの中点を超えてないかを確認します
QTcでは0.35-0.44が正常範囲です
実際のプレゼンは
HRは大体4マスごとにQRSがあり75回/分程度
リズムはPとQRSが連絡しており、PがⅠ,Ⅱで陽性であり洞調律
左房負荷や右房負荷を疑う所見はなし
PQ間隔は3mmくらいで房室ブロックはなし
Ⅰ,Ⅱは陽性であり軸偏位なし
QRS幅は2mmくらいでnarrow QRS
abnormal Qはなし
移行帯はV3-4であり正常範囲、poor Rやtall Rはなし
ST-T変化はなし
QTがRRの中点を超えていないためQT延長もなし
となります。
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