発熱が続いているけどCRP上昇なしという時に想起すべき鑑別を挙げてみましょう。
●CRPについて
CRP=C-reactive proteinの略であり、Cはcapsular polysaccharide(C多糖類)を指す
CRPは感染、炎症、細胞障害をきっかけに上昇するサイトカイン(IL-6、IL-1β、TNF-αなど)により肝細胞から産生される。CRP産生は感染などの刺激から4-6時間後から始まり、36-50時間後にピークを迎える。またCRPの半減期は19時間と言われている。
CRPはオプソニン化や貪食細胞の誘導を起こす、1.5mg/dLを超えるとC1qをクリアランスし補体活性化を抑制するなど免疫反応を調節する役割がある。
●CRP陰性の発熱をきたす病態
①中枢神経感染症
CRP産生はIL-6などの炎症性サイトカインが肝細胞に作用することで生じる。そのため炎症が中枢神経に限局している場合にはCRP上昇が乏しいことがある。ウイルス性髄膜炎、結核性髄膜炎などではCRP<0.05のことが比較的多いらしい。
②SLE 全身性エリテマトーデス
SLEでは活動性が高くてもCRPの上昇が乏しい(<1mg/dL)ことが知られています。理由としては活動性がIL-6ではなくINF-αが関与していること、抗CRP抗体が存在することが考えられています。しかし漿膜炎(心外膜炎、胸膜炎、腹膜炎)を起こした場合はCRP上昇を認めるので注意が必要です。
また猫ひっかき病や免疫芽球性T細胞性リンパ腫でもCRP上昇が乏しいことが言われれおり、リンパ節腫脹の診察が重要です。
③高体温
熱射病、無汗症では高体温になります。
抗コリン薬(過活動膀胱薬や抗精神病薬など)は二次性無汗症の原因となるので注意が必要です。
④感染早期
IL-6など炎症性サイトカインが産生されCRP産生に至るまでのタイムラグがあり、感染刺激から4-6時間後からCRP産生が始まると言われています。そのため感染早期では上昇していない可能性があります。
⑤トシリズマブ
関節リウマチなどに対してトシリズマブ(アクテムラ)を使用している場合にはCRP上昇しにくいことが言われています。トシリズマブはIL-6の受容体に対するモノクローナル抗体でありCRP産生が抑制されます。
⑥薬剤熱
機序としては過敏性反応などいくつか言われています。
2-3週間以内の新規薬剤をまずは疑うことが重要です。抗生剤は約8日で薬剤熱を発症すると報告されています。中止して72時間ほどで解熱が得られるため、それでも発熱が続く場合には他疾患を考慮する必要があります。
⑦炎症を介さない発熱
体温中枢のセットポイントの上昇/末梢血管収縮による熱放散の抑制→心因性発熱、内分泌疾患(甲状腺機能亢進、副腎不全)、頭蓋内圧亢進
個人的にはDVTによるCRP陰性の不明熱をみたことがあり、こちらに記載させていただきます。
⑧肝硬変
肝臓のCRP産生能が低下しており上昇しにくい。一方で肝硬変自体でIL-6やTNFレセプターの発現が亢進していることでCRPが上昇していることもあります。
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