血液ガス分析を正しく理解することは病態理解のために重要です。救急外来ではサッとガスを読むことができる必要があり、パターンで覚えてしまうのが最も簡単です。
●血液ガスを読む順番
①pH→代謝性/呼吸性→AG
まずはアシドーシスなのかアルカローシスなのか、代謝性なのか呼吸性なのかを確認します。
呼吸性ではPCO2、代謝性ではHCO3-に注目すればいいですね。
加えてAG(アニオンギャップ)まではすぐに計算してしまいましょう。この時注意点は低AlbがあればAGは補正する必要があるということです。ΔAlb×2.5を計算したAGに加えることで補正AGを求めることができます。
ここまでは誰でもできるはずですが、ここからは意識して行うようにしないと身につかないです。いろんなやり方がありますが最も簡単なやり方を紹介します。
②Na-Clを計算する
Na-Cl>36であれば代謝性アルカローシス、Na-Cl<36であれば代謝性アシドーシスが存在することが確認できます。
どうしてそうなるのかというと、Na-Cl=HCO3+AGという大雑把な式が成り立ちますが、Na-ClはAGが定数(12)であると仮定した時はHCO3によって変動することになります。そのためNa-Clは補正HCO3を間接的に評価していることになります。
③代償のチェック
呼吸性代償をチェックしたい時はHCO3+15=PCO2(実測からどれくらい差があるか)
腎代償をチェックしたい時はΔHCO3=0.1〜0.2×ΔPCO2 (急性)、ΔHCO3=0.4〜0.5×ΔPCO2 (慢性)
という式で評価できます
●例題
Na143、K4.5、Cl94、Alb4.0、pH7.20、pCO2 35、HCO3 14
①pH→代謝性/呼吸性→AG
pH7.20なのでアシドーシス
pCO2 35、HCO3 14なので代謝性
AG=143-94-14=35 Alb正常範囲で補正なし
AG開大性代謝性アシドーシスあり
②Na-Clを計算する
Na-Cl=143-94=49>36であり代謝性アルカローシスあり
③代償のチェック
メインは代謝性アシドーシスなので呼吸性代償が適切かを評価する
HCO3+15=29であり実測PCO2は35となっている。代償が十分なら29になっているはずなので呼吸性アシドーシスもあり
結果:
AG開大性代謝性アシドーシス
代謝性アルカローシス
呼吸性アシドーシス
●AG開大性アシドーシスの原因
GOLDMARKのゴロで覚えましょう
G:グリコール
O:オキソプロリン
L:L-乳酸
D:D-乳酸(短腸症候群などで問題となる)
M:メタノール
A:アスピリン/アセトアミノフェン長期使用
R:腎障害
K:ケトン
一般的な原因としては乳酸アシドーシス、ケトアシドーシス(DKA、AKA、飢餓)、腎不全(尿毒症)です。加えて内服歴(アスピリン、カロナール長期使用)を確認して鑑別を進めていくことが多いです。薬剤歴はメトホルミンの乳酸アシドーシス、SGLT-2Iの正常血糖DKAなどでも重要であり必ず確認しましょう。
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