肺癌で放射線化学療法中の80歳男性が、発熱が続くため前医から当院呼吸器内科に転院となった。局所症状や身体所見上で有意な所見はなく、前医で血液培養、尿培養提出の上でセフトリアキソンが開始されていた。転院後に追加連絡で血液培養からサルモネラが検出されたと連絡があり、当科コンサルトとなった。
フォーカス不明なサルモネラ菌血症を見たら何を考えるか?
この時点である疾患を想起しないといけない点が本症例のポイントであった。
前医で施行した造影CT検査を見ると腸炎を疑う所見はなく、腹部大動脈瘤の腹側にわずかなLDAを認め、微小なガス像も認めた。サルモネラによる感染性大動脈瘤を疑い心臓血管外科に連絡した。年齢や患者背景から手術は気管切開や寝たきり等のリスクを伴うことが予想され、本人/家族と相談の上で保存加療の方針となった。
サルモネラは感染性大動脈瘤の原因菌として1-2割を占めるとされ、腸炎症状を欠くサルモネラ菌血症ではIEと感染性大動脈瘤を検索する必要があると考える。そのほか感染性大動脈瘤の原因菌としてはS.aureus(5割)、肺炎球菌、梅毒が重要である。
感染性大動脈瘤の保存加療中に注意すべきことは何か?
感染性大動脈瘤の症状は本症例のように発熱のみということもあるが、他には切迫破裂に伴う胸腹部痛や背部痛を訴えることがある。保存加療中にこれらの所見が出現、増悪してくる場合には切迫破裂を疑い造影CTリピートが必要なので、日々必ず確認すべきと考える。
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