クリプトコッカス抗原の意義は?

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【Clinical Question】
クリプトコッカスはCNS、播種性、孤発性肺病変、皮膚病変が代表的なプレゼンテーションとされています。血清クリプトコッカス抗原陽性のコンサルトを受けることがあり、調べてみました。どういう患者でチェックすべきか、陽性時の対応について考えます。


【Answer】
クリプトコッカスは酵母様真菌の一種であり、古典的にはHIV患者で問題となりますが、移植後や自己免疫性疾患の免疫抑制患者でも問題となります。

血清クリプトコッカス抗原は、HIV患者に対するスクリーニングとしての意義が最も確立されています。2024年 Lancetのガイドラインでは、ART未導入 or CD4<200患者(<100とする文献もある)では血清クリプトコッカス抗原のチェックを行い、陽性なら髄膜炎を含めた精査が必要であり、無症候性抗原血症に対してもフルコナゾールによる先制治療が推奨されています。

問題はnon-HIV患者ですが、血清クリプトコッカス抗原のルーチン検査、一次予防、先制治療の推奨はないということがまず重要であり、なんとなく測定しないということが重要です。感度・特異度は高く、補助診断としては有用とされていますが、non-HIV患者では感度が低くなる点に注意が必要です(non-HIV患者の肺限局クリプトコッカスは感度56%中枢神経病変は感度87%)。そのため、免疫不全者の肺病変、亜急性の頭痛・意識変容では、クリプトコッカス抗原を測定するというよりは、気管支鏡や髄液検査(培養と髄液クリプトコッカス抗原)等での診断と他疾患の除外が優先されると考えます。中枢神経病変では感度87%と高めであり、髄液検査をすぐに行えない状況では血清クリプト抗原をチェックし、陽性なら診断の補助とするのは選択肢かと思います。

髄膜炎など見逃すと致死的な疾患であることは間違いないので、“non-HIV患者でクリプトコッカス抗原測定したら陽性だった”という患者では、HIV患者と同様にCNS、播種性病変、肺病変、皮膚病変を中心に精査を行う必要があります(胸部画像検査、髄液検査(培養/クリプト抗原)、血液培養は必須)。髄液クリプトコッカス抗原検査はnon-HIVでも感度97%と非常に高く、本疾患を疑う/除外したい場合には提出が望ましいと考えます。

【Take Home Message】
・ART未導入 or CD4<200のHIV患者→血清クリプト抗原でのスクリーニング
・non-HIV患者→ルーチンのスクリーニング、予防投与は不要
・血清クリプト抗原陽性→CNS、播種性病変、肺病変、皮膚病変のチェック(髄液検査(培養、髄液クリプトコッカス抗原)、血液培養、胸部画像チェック)
・髄液クリプト抗原は感度が非常に高く、疑わしい症例/除外したい状況では提出が望ましい

【参考文献】
Lancet Infect Dis. 2024 Aug;24(8):e495-e512. →クリプトコッカスの国際ガイドライン

Clin Infect Dis. 2001 Sep 1;33(5):690-9.

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