急性膵炎のマネジメント

GIM

急性膵炎ガイドラインが2021年に改訂されています
内科医が知っておくべきポイントをおさらいしましょう

●急性膵炎の診断基準
①上腹部の急性腹痛発作と圧痛
②血中/尿中の膵酵素の上昇(P-AMYやリパーゼが特異性高い)
③超音波、CT、MRIなどで急性膵炎に伴う以上がある
これら3のうち2つ以上を満たし、他疾患を除外することで診断となる

正直なところエコーで膵炎を診断できる自信はなく、日本ではCTへのアクセスも良いのでそちらで診断することが多いです。エコーは肝内胆管拡張、腹水の有無、AAAや腸閉塞の除外くらいのイメージで行っています。

●急性膵炎のマネジメント
◉重症度評価

厚労省重症度判定基準の予後因子やCT gradeを参照して重症度分類を行う。重症例であれば集中治療室の医師など連絡を入れておくと良いと思われれる。

◉原因検索
本邦ではアルコール性が42.8%、胆石性が19.8%とされている
①胆石性ではないか
初期対応で最も重要なことは胆石性膵炎ではないかということである
理由は胆石性であればERCPを行わないと原因解除できず、初期対応が全く違うからである。

胆石性では総胆管閉塞や胆管炎に伴う肝胆道系酵素の上昇を認める。CTで胆石を認めないこともあるため、肝胆道系酵素の持続的な上昇を伴う場合はERCPを検討する。エコーは胆嚢内の胆泥やCTで見つけられない結石など検出に役立ち、侵襲性も低いので必須の検査である。
胆石性であれば胆摘が適応となるため落ち着いたら外科紹介も検討する

②飲酒歴の聴取
アルコール性はビール1.5L/day(アルコール 50g/day)を5年以上続ける程度の慢性的な多飲で発症するようであり、直近でよく飲酒しているだけということでは生じないとされる。
多飲歴がある場合はCAGEスコアなどでアルコール使用障害のスクリーニングを行う。過去にアルコール離脱を起こしたことがある場合や、酒を飲まないと手が震えるなどの症状があるなら、最終飲酒時間を聴取しつつロラぜパムでのアルコール離脱予防を検討する必要がある。
また食事歴も重要であり、飲酒のみで食事はほぼとらないという場合にはrefeeding予防も検討する。

③胆石でもアルコールでもない膵炎
高Ca、高Tg、薬剤性、膵癌/IPMN、膵胆管合流異常、慢性膵炎の増悪、自己免疫性、虚血性、外傷性などが鑑別となる

MRCP:膵癌による主膵管狭窄、膵胆管合流異常の鑑別に有用
IgG4:高齢男性、顎下腺腫脹、Capsule like lesionが特徴
薬剤性:フロセミド、シンバスタチン、アザチオプリンなど様々

これらのうち最も重要と思われるのは膵癌である。膵癌は早期に見つけないとどんどん生存率が悪化する。そのため造影CTはダイナミックかつthin sliceで撮像し、目を皿のようにして読影しないといけない

◉治療
・適切な補液

リンゲル液による十分な初期輸液が重要である。
どのくらい補液すればいいかについては明確な基準はないが、高齢者の重症膵炎では体液量の安全域が狭く管理が難しいことがある。尿が出ないからといって輸液を入れ続けると気がついたら心不全になっていた、ということもしばしば起こる。

ポイントは尿量0.5ml/kg/hr以上が達成されれば速やかに急速輸液を終了すること、輸液必要性が生じれば適宜追加投与すること、48時間以降も積極的な補液をすることはむしろ溢水や腹部コンパートメント症候群リスクが上昇することである。

急性尿細管壊死などによる腎性AKIで尿が出ていない場合には補液をしても尿が出るわけがない、エコーなどで体液量評価の努力をし適正範囲を維持することが重要である。

BISAPというベッドサイドで行う急性膵炎のモニタリングも重要
日々BUNやHt、尿量をモニタリングして悪化がないかをチェックする(BUNやHt上昇していれば濃縮を疑う、輸液が足りていないかもしれない)

・疼痛コントロール
アセリオでもコントロールされない場合はフェンタニル持続投与を開始する。NSAIDsはAKIがある場合には使いにくいが、炎症を抑える作用があり有用とされる。

・栄養
落ち着いたら48時間以内に食事を再開
この頃には重症化するかどうかは予想がつく、よくなってきているようならしっかり鎮痛をして早期に食事を開始する

・合併症評価
腹部コンパートメント症候群、感染性膵壊死、仮性動脈瘤などがあがる。
経過が思わしくない場合(血圧が安定しないなど)は造影CT再検を行い評価する。
腹部コンパートメント症候群はAKIなどの臓器障害から疑い、膀胱内圧をチェックする。診断されれば重症後によりベッドを水平にしたり、胃管やフレキシールによる減圧、腹水穿刺、筋弛緩や開腹減圧まで検討されるため、ICU管理が望ましいと考える。

●その他の薬物療法について
予防的抗菌薬:軽症例には行わないことが推奨される
蛋白分解酵素阻害薬:生命予後や合併症率の改善効果は証明されていない
胃酸分泌抑制薬:投与は行わないことが推奨される

参考文献:急性膵炎診療ガイドライン2021

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