「血液培養で○○が生えました」というコンサルトもしくは場面に遭遇することは多いですが、感染症医がどのように考えてアセスメントするかを書いてみます。
① 何の菌が何セットで生えたのか
まずは血液培養で生えた菌がコンタミかどうかを判断します。
外から穿刺するので血液培養はどうしてもコンタミしてしまう可能性があり、血液培養は2セット採取する必要があります(2セットともコンタミという可能性は1セットコンタミする可能性の2乗になり非常に低くなる)。
注意するのは1セットから出てもアウト(真の菌血症として扱うべき)な菌があり、S.aureusやGNR、真菌はその代表です。逆にコンタミしやすい菌というのはCNS、バシラスなどの皮膚常在菌です。しかし、その場でコンタミと判断するのは非常に難しく、慎重な対応が必要です。コンタミだろうと思っても実は真の菌血症であった場合、治療が遅れてしまう可能性があるからです。
② その菌はどんな感染症を起こすのか
例えばE.coli菌血症の症例であれば、感染症プラチナマニュアルなどでE.coliがどんな感染症を起こすかを調べてみましょう。そうするとE.coliが消化管、胆管、尿路などにいる菌であることがわかります。血液培養でE.coliが生えたから尿路感染かななどと適当にならず、消化管は大丈夫か、胆管は大丈夫かなどと点検作業を行う必要があります。少なくとも尿路感染症で矛盾がない状況というのは、左右どちらかのCVA叩打痛があり、尿と血液から同一感受性の同一菌が出ている状況かと思います。それ以外の状況、例えば尿培養が残念ながらとられていない時などでは、胆管系は大丈夫か(肝胆道系酵素上昇はないか、CTを取っていれば胆管拡張などはないか)、消化管は大丈夫か(直近でCSはいつやっているか、CTを取っていれば消化管に異常はないか)を確認します。その上でフォーカスがわからないE.coli菌血症ではどうしても消化管からのtransient bacteremiaは除外できず、CSや便潜血を検討しようという風に考えます。
これらを踏まえてCNSが1/4で生えたという場面を考えてみます。
コンタミじゃねと考えてしまいがちですが、本当にコンタミでいいかと立ち止まることが重要です。
その上でCNSが起こしやすい感染症というと、やはりCRBSIや人工物/デバイス感染であり、まずはCVやPICC、ペースメーカー、人工血管などの血管内デバイスが入っていないかを確認します。それらがなく、エントリーが判然としないようならコンタミらしさが高まります。血管内デバイスが入っている場合は、それが抜去可能かという点も併せて確認しておくと良いです(真の菌血症ではデバイス抜去が原則必要)。またそれまでバンコマイシン等の有効そうな抗菌薬が入っていない場合は、抗菌薬を入れる前に血液培養2セットリピートしておくのが良いです。治療していないのに血液培養から消えていれば、さすがにコンタミでしょと考えることができます。
またコンタミらしさの情報として、代替診断があるかという点が重要です。尿路感染症でセフトリアキソンを投与して経過が良好な患者に、MRCNSが血液培養で1/4で出たと言われても、経過からは真の菌血症とは考えにくいでしょう。加えて、カテーテルからの採血や鼠径穿刺ではコンタミしやすいというデータはあり、どういう形で採取された血液培養かは確認しておくのもいいかもしれません。
ただ、状況として血行動態が不安定などの状況であれば1/4であったとしても、血液培養2セットリピートの上で、CNSをカバーしてバンコマイシンを追加するというのは妥当と考えます。
そのためCNSが1/4本で検出されたという状況では、
・状態が悪い
血培とってバンコ、デバイス抜去検討(PICC/CVなど可能な限り入れ替え)
・全身状態が安定
いずれにせよ血培リピート
血管内デバイス等がなくコンタミっぽい→様子見でOK
CVなど血管内デバイスがあり真の菌血症かもしれない→経過が感染症らしければバンコ開始、そうでないなら様子見も妥当(発熱持続や炎症反応上昇傾向などあれば感染症らしい、その時の一過性の発熱で状態も落ち着いているなら様子見もOKだろう)
・血液培養とったタイミングでバンコマイシンがempiricに始まっている
主治医がCRBSI等を疑いすでにバンコマイシンを開始している場合は、もうそれとしてやっていくしかないと考えます。デバイスが適切に抜去されているか、血液培養リピートで陰性化したか(持続陽性なら化膿性血栓性静脈炎などの血流感染を強く疑う)など診断に沿ってマネジメントをしていきます
・PMリードや人工血管などの容易に抜去できないデバイスが入っている患者の場合
これが一番悩ましい症例です。バンコマイシンがまだ入っていないならすぐに血液培養2セットリピートして、それが陰性ならセーフ、陽性ならアウト(デバイス感染を疑い画像評価、抜去できそうか検討)。バンコマイシンがすでに入っている場合、非常に悩ましいですが、代替診断がなければ、基本は感染があるとして対応せざるをえない印象です(人工血管感染だった場合、治療しなかったら死ぬ可能性がある)。身体所見(人工血管感染であればその部位の圧痛、足への塞栓はないかなど)や画像所見(瘤の拡大はないか)の情報を集めましょう。また持続菌血症になればアウトなので、血液培養は必ずリピートしましょう。
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