急性心不全の初期評価は?

「急性心不全の初期評価の3つの軸はなにか?」
①血行動態
②原疾患
③増悪因子

①血行動態
Nohria-Stevenson分類により血行動態を評価する。
ポイントは組織低灌流の有無(warm or cold)とうっ血(wet or dry)の有無である。

組織低灌流:末梢循環が保たれているか
coldは四肢冷感、冷汗、意識レベル低下、乏尿などバイタルサインを含む身体所見から簡便に判断する。メカニカルサポート(IABP、PCPS、IMPELLAなど)が必要となる可能性があるためすぐに循環器コンサルトが必要な病態である。

うっ血:起坐呼吸、発作性夜間呼吸困難、頸静脈怒張、浮腫など

wet&warmの初期治療は利尿薬、血管拡張薬、NIVなどである
血行動態を分類することで初期対応の方針を決定する

②原疾患の評価
緊急介入すべき疾患がないかを評価する必要がある。ゴロ合わせは「MR.CHAMPH」でありこれを念頭に置く。
M:Myocarditis 心筋炎
R:Right-sided HF 右心不全
C:Acute Coronary Syndrome ACS
H:Hypertensive Emergency 高血圧緊急症
A:Arrhythmia 不整脈
M:Acute Mechanical cause 急性機械的原因/合併症
P:PE 肺塞栓
H:High output HF 高拍出性心不全

これらは病歴、身体所見、心電図、エコー、血液検査を駆使して評価する。
このうちACSと機械的合併症は重要である。ACSと判断すれば血管造影の適応をコンサルトする必要があり、機械的合併症(急性MR/AR)加えて重症ASでは内科的な心不全加療では安定化ができず外科的介入やメカニカルサポートが必要となる。

③増悪因子
心不全の急性増悪因子は「FAILURE」で検索する。
F:Forgot Meds 怠薬、drop out
A:Arrhythmia/Afterload/Anemia
I:Ischemia/Infection
L:Lifestyle 塩分過多など
U:Upregulation 甲状腺機能障害など
R:Regurgitation AR、MR
E:Embolization PE
増悪因子への介入を行うことは急性期治療や退院後の再増悪予防に役立つ。

急性心不全に対して内科的加療を開始する前に
①心原性ショックではないこと
→coldの所見はないか
②ACSや外科的介入が必要な病態がないこと
→心電図、エコーで確認
③特別な介入の必要性
→心筋炎、右心不全、不整脈、甲状腺、脚気心、高血圧緊急症
を確認することが重要である

参考文献:
急性・慢性心不全診療ガイドライン(2017年改訂版)

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