慢性閉塞性肺疾患(COPD Chronic Obstructive Pulmonary Disease)についてまとめます
「COPDの定義、病態生理など」
COPDは完全には可逆性ではない気道狭窄や閉塞を特徴とし、呼吸器症状が持続する慢性肺疾患です。
COPDでは、タバコなどの刺激によりマクロファージと肺胞上皮細胞が活性化されることで慢性炎症が生じ、最終的には末梢気道の線維化や肺の弾性低下が起きる。気流閉塞が悪化することで呼気が十分にできなくなり、呼気が完了する前に吸気が開始されるため、胸郭の前後径の増大と横隔膜の平坦化が生じる。
横隔膜の平坦化が生じると、労作時に吸気量を増やす力が低下します。その結果呼吸筋の肥大を生じることになります。呼吸仕事量も増加するため呼吸困難感を助長します
「どういう患者でCOPDの存在を疑うか」
「COPDを疑ったらどうするか」
喫煙歴がある40歳以上で進行性の呼吸困難、慢性咳嗽/喀痰、下気道感染症を繰り返す患者で疑う必要があります。喫煙歴は20年以上になるとCOPDの症状が顕在化してくると言われており、40 pack-year以上のヘビースモーカーでは陽性尤度比12と報告されています。
COPDの診断は気道狭窄/閉塞を確認するためスパイロメトリーを行います。確定診断には気管支拡張後の1秒率(FEV1/FVC比)が0.70未満であることが必要です。これは可逆性の喘息患者と区別するためである。加えてその他の慢性呼吸器疾患を除外することが必要です(気管支拡張症、閉塞性細気管支炎、結核、びまん性汎細気管支炎、心不全など)。
「COPDの診断が付いたらどうするか」
①重症度の評価
②適切な初期治療
③ヘルスメンテナンス
①COPDの重症度評価
・GOLD分類
%FEV1(対標準1秒量)を用いた病期分類であり古くから用いられています。後述するグループ分類の方が予後を反映していることがわかり、現在はそちらが用いられる傾向にあります。
・mMRCスケール modified Medical Research Council Dyspnea Scale
呼吸困難が日常生活にどれほど影響しているか
階段歩行、平地歩行、外出などどれくらいで息切れが生じるのかを確認する
・CAT質問票
咳や痰、息切れなどの症状やQOLを0-5の6段階で患者自身に評価してもらう
・GOLD2021のABCDグループ分類
中等度-重度の増悪歴と自覚症状(mMRCやCAT)を用いてグループA-Dに分類する。増悪歴は年2回以上、自覚症状は平地歩行が辛いかどうかがカットオフとなります。このグループ分類を中心に吸入薬の選択を行います。
②適切な初期治療
治療目標は症状の改善、運動能とQOLの向上、増悪予防、死亡率の改善です。
・禁煙
まず禁煙を勧める必要があります。禁煙はFEV1の低下を遅らせ死亡率が低下すると言われています。15年禁煙した場合は肺がんの相対リスクが80-90%低下したとも言われており、患者の行動変容を促すことが必要です。
・吸入薬
COPDの基本はLAMA(or LABA)の吸入です。
気管支拡張薬は症状、気流制限の長期的な改善、増悪の軽減の効果が示されています。基本は症状が出てきたら吸入を始めるというイメージです。
1秒率改善効果はLAMA>LABA>ICSとされており、早期からLAMAの導入を検討します。閉塞隅角緑内障やコントロール不良な前立腺肥大症には禁忌とされているので確認が必要です。
COPDにおけるICSの立ち位置は、喘息合併、血中好酸球数>300、中等度以上のCOPDで追加することで増悪や入院を減少させるという効果が示されています。ただし肺炎リスクが倍くらいになると報告もあり導入は症例ごとに検討します。
・吸入薬選択の目安
グループA→発作時SABA or LAMA or LABA
グループB→LAMA or LABA or LAMA+LABA
グループC→LAMA or LAMA+LABA
グループD→LAMA or LAMA+LABA or ICS+LABA
患者自身の吸う力、手技の理解などを踏まえて総合的に吸入器を選択します。吸入力がある人はエリプタ、弱い人はレスピマットといった感じで選択します。
・吸入薬以外の薬物療法
カルボシステイン:急性増悪をわずかに減らすかもしれない
PDE4阻害薬(Roflumilast):中等度以上で呼吸機能改善、急性増悪減少(日本未承認)
マクロライド:中等度以上で増悪率を減らす、耐性菌やQT延長、難聴などの副作用あり
テオフィリン:増悪回数を減らすことが示されているが治療域が狭く中毒に注意が必要。難治性の場合のみ使用を検討する。現在はほとんど使用されない。
③ヘルスメンテナンス
肺炎球菌ワクチン: 65歳以上では無料の接種券が配布される。ニューモバックス(PSV23)を5年おきに接種することが推奨される。
インフルエンザワクチン/COVIDワクチン:接種をすすめる。
肺がん検診:20-30pack-year以上の喫煙歴があれば年1回のCTフォローが推奨されている(肺がんによる死を20%減らす効果が示唆されている)
ACPの導入:慢性進行性の疾患でありGoal of careが重要です
急性増悪の治療後、併存疾患としてCOPDを持つ患者ではこれらを確認して抜けがないことを確認しましょう。
参考:MKSAP19など
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