インフルエンザは毎年主に冬に流行し、急性呼吸器感染症を引き起こし、通常はself-limitedな経過をとりますが、一部で合併症を起こし、こじれることがあります。
今年もちらほら感染者を認めており、こじれ方のパターンをまとめておきます。
・肺炎
インフルエンザ感染者の肺炎は最も多い合併症であり、①二次性細菌性肺炎、②インフルエンザ肺炎、③両者の混合、のパターンがあります。
まずは、二次性細菌性肺炎とインフルエンザ肺炎を病歴や検査所見から区別する努力をすることが重要です。
それぞれの病歴の特徴は、二次性肺炎はインフルエンザとしての症状は落ち着いてきた後に再度肺炎症状が出現するという病歴であり、インフルエンザ肺炎はインフルエンザの発症からそのまま肺炎になるというイメージです。
私はストレートに患者さんに一度よくなってまた悪くなってきたのか、直線的にどんどん悪くなってきたのかというふうに問診しています。加えて、痰Gram染色の所見も重要であり、インフルエンザ肺炎では起因微生物がパッとしない所見であることが多いです。
インフルエンザ後の二次性肺炎の主な原因微生物として、肺炎球菌、S.aureus、GASなどが挙げられます。免疫不全者/ICU患者の亜急性侵襲性肺アスペルギルス症なども知られていますが、比較的稀です。
ただ多くの場合、抗ウイルス薬と細菌性肺炎としての抗菌薬を開始しつつ、臨床経過や培養結果を見つつ、抗菌薬終了時期を検討するという流れになることが多いです。
抗ウイルス薬は入れるのであればできるだけ早期がのぞましく、通常は48時間以内が良いとされています。入院患者では、とっとと入れてしまえば、後からインフルエンザは大丈夫かという議論にならずに済むため、悩むくらいなら入れてしまえば良いかなと思っています。
・心疾患
インフルエンザ関連の心疾患は、①心筋梗塞、②心筋炎・心膜炎あたりが重要です。
心筋梗塞は感染直後(特に7日以内)がハイリスクとされており、血管リスクがあるインフル患者の胸痛というのは注意が必要と考えます。
心筋炎は、インフルエンザ患者の心不全増悪というようなパターンで問題となり、心不全の原因としてインフルエンザ心筋炎を鑑別に挙げ、こちらもとっととウイルス治療をやってしまうのが後腐れない印象です。
このように、インフルエンザ患者の呼吸不全の鑑別は①二次性肺炎、②インフルエンザ肺炎、③心不全(特にインフルエンザ心筋炎)を念頭に起きつつ、そのほか通常の呼吸不全も潰していくというようにマネジメントするとうまく管理できるかと思います。最後はARDSとなりますが、その場合は肺保護管理など集中治療管理が必要になります。重症例では早々にICUと治療方針を協議するのが良いでしょう。

・神経系合併症
インフルエンザ脳炎・脳症、seizure、ADEM、ギランバレーなどの神経系合併症が知られています。
・横紋筋融解・筋炎
筋痛は多くの症例で見られますが、一部で筋炎を起こすこともあります。著明な筋痛で圧痛を伴い、下肢優位な傾向があります。インフルエンザ感染者の筋痛、体動困難という感じで来ることがあります。
【Take Home Message】
・インフルエンザ患者がこじれたら、インフルエンザの合併症という観点を忘れない。
・インフルエンザ患者の呼吸不全は、二次性肺炎、インフルエンザ肺炎、心筋炎などをまずは念頭にワークアップする。
・とっとと抗ウイルス治療をしてしまうことで、後々悩まなくて済むことが多い
【英語学習】
・When a patient with influenza deteriorates, do not forget to consider influenza-related complications.
・In a patient with influenza who develops respiratory failure, start your work up by consider secondary bacterial pneumonia, primary influenza pneumonia, and myocarditis.
・Early initiation of antiviral therapy often saves you from diagnostic dilemmas later on.
【参考文献】
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