抗血栓薬は血栓イベントの予防のために内服しますが、逆に出血リスクが増大してしまいます。臨床ではそれらのrisk/benefitを天秤にかけ適応を考慮しています。出血性合併症が起きることは多く対応をある程度覚えておくことが重要です。
抗血栓薬を内服している場合に薬剤中止に加えてどのようなことをする必要があるかをまとめます。
●抗血小板薬
商品名:バイアスピリン、クロピドグレル、エフィエントなど
特異的拮抗薬:なし
検討される対応:血小板輸血、デスモプレシン(0.4μg/kg iv)
血小板機能を不可逆的に阻害するため基本的に特異的な拮抗薬はありません。血小板輸血することで新鮮な?血小板を補充することが検討されますがエビデンスが確立しているものではないようです。海外のガイドラインではデスモプレシンが推奨されているものがありますが、本邦では適応がありません。
●ワーファリン WF
特異的拮抗薬:4 factor PCC(ケイセントラ)、Vit K(ケイツー)
その他検討される対応:FFP
VitK拮抗作用がある古典的な抗凝固薬です。基本的にはVitKを投与することで拮抗できます。WF内服患者で出血をきたしている場合にはまずVitK静注を行います。ケイツーは内服製剤もありますが効果発現が遅いため今出血が予想される時は静注が良いとされます。ケイツーの投与はショットで行うとアナフィラキシー様反応をきたすことがあるので、50mlに解いて30分程度で落とすと良いでしょう。
緊急性のある出血性病態があれば、PCC(ケイセントラ)の投与を検討します。これは欠乏している凝固因子を直接補充することで拮抗することができる製剤です。FFPと比較して止血効果は非劣勢であり、拮抗作用の発現は10分と早く、容量負荷も少ないというメリットがあります。FFPも凝固因子を補充することで止血効果が得られ、幅広く使用されている製剤でPCCよりも安価であるという点で有用な製剤です。
また薬剤使用時には血栓リスクが上昇することを本人/家族にICすることが重要です。
・PT-INR過延長への対応案
・大出血 major bleedingの定義
①致死性出血
②頭蓋内、脊髄内、眼球内、心囊内、関節内、筋肉内(コンパートメント症候群を伴う)、後腹膜の重要部位の少なくとも1つに出血が発生
③2g/dL以上のHb減少あるいは4単位以上の赤血球輸血を要する
●リバーロキサバン、アピキサバン、エドキサバン
特異的拮抗薬:直接作用型第Ⅹa因子阻害薬中和剤(オンデキサ)
その他検討される対応:PCC(ケイセントラ)
以前は非特異的な拮抗薬としてPCCの使用が検討されていたが、新規に特異的拮抗薬が開発された。本邦で使用され始めたのも最近であり施設基準に沿って使用を検討する必要がある(非常に高価)。
●ダビガトラン
特異的拮抗薬:イダルシズマブ
その他検討される対応:PCC(ケイセントラ)
DOACのひとつであり特異的拮抗薬があるという特徴がありました。しかし近年ではⅩa因子阻害薬に対しても特異的拮抗薬が開発されています。
●ヘパリン
特異的拮抗薬:プロタミン
ヘパリンはアンチトロンビン活性を増強することでトロンビンやⅩa因子を非活性化します。抗血栓効果は4時間で消失するため多くの症例では拮抗薬は不要となります。投与後2-3時間以内のヘパリンを拮抗したい場合にプロタミンを用います。
一般的には1mgのプロタミンが100単位の未分画ヘパリンを中和するとされているため、3時間以内に投与されたヘパリン総量を計算してプロタミンを投与することになります。
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