AF tachycardiaへの対応

GIM

AFは洞結節以外の部位から発生する異所性興奮であり、無秩序な心房活動により不規則な心室反応を引き起こす。その結果QRS波が不整(irregularly regular)に出現する上室性頻拍である。
AFは高齢になる程増加し、心不全に合併すると生存率が低下することが知られています。一般内科医でもよく遭遇するAF tachycardiaへの対応をまとめてみます。

●AF tachycardiaを認めたら
急性期の対応と慢性期の対応で分けて考えることが重要である。

●Acute manegement
①ショック、ACSなど状態不安定な場合はDCを検討

この時のDCは同期モードにすることを忘れないようにしましょう。除細動する場合には抗凝固療法を開始していない場合は血栓症のリスクがあります。背に腹は変えられないのでDCをかけますが、必ずICしておいた方が良いです。

②誘因の検索
明らかな誘因があればそれを取り除く必要があり、下記のような原因がないかをチェックする。

③抗凝固療法の開始検討
安定している患者のprimary goalの1つは心原性脳塞栓症を起こさないことです。血栓リスク(CHADs2スコア)と出血リスクを天秤にかけ、抗凝固療法の適応を検討しましょう。
機械弁やMS、末期腎不全がなければDOACを用いることができる。夜間でとりあえず抗凝固を開始したい時はヘパリン持続を用いるとよい(翌朝主治医に抗凝固継続を検討いただく)

④HRをコントロールし症状を抑える
primary goalのもう1つはHRをコントロールし症状を抑えることです。HRの目標値は90回/分とし60-110回/分の範疇におさまるようにレートコントロールを行います。
器質的な疾患がなく既に抗凝固薬が開始されており、有症状でなんとか止めたいという場合には、Ⅰc群の抗不整脈薬(サンリズムなど)を内服して薬物的除細動を試みることもあります。
ただしレートコントロールで症状が抑えられる場合には急性期にわざわざリズムコントロールをするメリットは少ないと言われており、あくまでレートコントロールでも症状が残っている場合で検討します。

レートコントロールを行う場合は心収縮能をチェックしておく必要があります。一般的なβ遮断薬やCa拮抗薬は陰性変力作用があり、心不全悪化リスクがあります。その場合は心収縮力を低下させない薬剤を用いる必要があります。
心収縮良好な時:ベラパミル、ジルチアゼム
心収縮不良な時:アミオダロン、ランジオロール、ジギタリス

実際に困るのはEF低下がある症例です。
急性期のマネジメントとしては電解質異常などの誘因を解除しつつ、心電図やエコーで虚血性心疾患や心不全の有無を評価します。抗凝固療法が導入されていない場合には血栓リスク/出血リスクを双方考慮し、必要ならDOAC内服 or ヘパリン持続を開始します。HR>110であればレートコントロールとしてアミオダロンをloadingし落ち着かないようならジゴキシン静注します。

・アミオダロン静注に関して
アミオダロンというと副作用が多いイメージがありますが、それは内服薬の話です。静注で用いる抗不整脈薬の中で比較的安全で非専門医でも使用できる薬剤として知られています。残念ながら本邦では慣習的に使用ハードルが高いです。私はこれまで湯水のごとく使用してきましたが特に問題は起きたことがありません。
心房細動などの上室性頻拍患者にアミオダロン静注を行ったところ、血行動態が不安定になった患者はなく、12時間以内に80%が洞調律へ復帰したという報告もあります。除細動効果があるため抗凝固療法を行っていない場合には注意が必要です。また平均HR27低下させるとも報告されレートコントロールの効果も十分です。

・ジギタリス静注に関して
こちらも副作用が多いイメージがありますが、急性期の短期間であれば問題なく使用できます。かつては急速飽和静注が用いられていましたが、最近は0.5-1Aを1日1回ドリップするというような投与方法になっています。持続静注ではないのでルートを占有することもありません。
AF tachycardia+HFrEFの急性期患者でアミオダロンでもHR<110達成できない場合の良い適応と考えられます。
高齢者や腎障害患者では濃度上昇しやすいため0.5Aに減量したりします。低K/Mgは中毒をきたしやすくなるので適宜補正します。

●Long-term manegement
急性期療法で状態安定すれば長期管理に移ります

①抗凝固療法
血栓リスクと出血リスクを天秤にかけて抗凝固療法を検討するという点では同様ですが、オプションがあります。
後述するリズムコントロールなどで長期間洞調律が得られている場合はそもそも抗凝固療法を中止することも考えられます。しかしこれは様々な議論があり中止の決定は専門科と議論した方が無難と考えます。
またDOAC開始後に下血を繰り返すというような症例では左心耳閉鎖/切除を検討できます。こちらも専門科と相談します。

②レートコントロール
急性期管理がうまくいけば内服管理へ移行します。基本はβ遮断薬のビソプロロールを用いることが多いです。HR90前後を目指し用量調整を行います。

③リズムコントロール
レートコントロールとリズムコントロールで明らかな予後の差はないとされていました(AFFIRM study)。動悸症状でQOL低下があるような症例ではアブレーションを検討するという感じでしたが、近年では早期のリズムコントロールが心血管死や心不全入院リスクを減らす可能性があることが示唆されています(EAST-AFNET 4)
「新規のAFは可能な限り早期のリズムコントロールを試みるため、循環器内科に紹介する」というのがスタンダードになっています。
アブレーション後の再発率に関しては、左房径>50mmや2年持続している症例では1年で50%以上が再発するとされています。リモデリング起きないうちの早期アブレーションが重要なことがここからもわかります。

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