NPPVはどのような時に有用か

GIM

●NPPV Non-invasive Positive Positive Ventilation
NPPVは非侵襲性陽圧換気のことで、挿管せずに酸素化や換気のサポートができるデバイスです。一般内科医でも使い勝手がよいのでぜひ使えるようになりましょう。

・NPPVの良い適応
実臨床で良い適応となるのは心原性肺水腫(いわゆるCS1)、COPD増悪です。細かいことを言うと抜管後のサポートや神経筋疾患の換気サポートにも用いられます。
まずはリザーバーマスクでも酸素化が微妙で呼吸努力が強い心原性肺水腫やCOPD増悪に積極的に用いると意識しましょう。

・NPPVにできること/できないこと
挿管適応のゴロ”MOVES”をもとに考えるとイメージしやすいです。
NPPVではO 酸素化とV 換気を代替できます。M 気道管理やE 喀痰貯留/増悪しそう、S ショックに対しては代替できないので、その場合は挿管しないといけません。NPPVを使用する時は気道や意識レベルOKでショックではないということを確認し、導入後に増悪しそうと思ったら挿管を躊躇わないことが重要です。そのためNPPVを使用するときは挿管を常に意識するということも重要です。

・NPPVの設定
イメージとしてはFiO2とPEEP:酸素化、PS:換気 という感じです。
加えてPEEPには肺胞虚脱改善、前負荷軽減の作用があります。前負荷軽減作用があり、心原性肺水腫に対して効果がありそうなことが理解できると思います。
またNPPVをつけ呼吸努力が取れると血圧も速やかに正常化してくることをしばしば経験します。これは交感神経亢進が解除され末梢血管抵抗が低下しているという機序が考えられ、後負荷軽減にも役立っていると言えます。

●心不全導入例
リザーバー15L/minでSpO2 90%かつ呼吸数35回の電撃性肺水腫に対してNPPVを導入する場合をイメージします。
こういう呼吸状態の場合は挿管が必要かをまず考えますが、心不全であればNPPVで逃げれることが多いので心不全かどうかをはっきりさせることが重要です。具体的には頸静脈怒張と下腿浮腫の有無、エコー所見を確認し、ポータブルレントゲンも併せて判断します。これらで心不全らしいと思えばNPPVをさっさと導入してしまいましょう。この時気胸がないことは確認します。

・NPPV導入時のポイント
NPPVはこのような症例では挿管を防ぐ切り札となります。しかし呼吸状態が悪そうなあまり担当医が慌ててしまい、説明をせずに導入してしまったり、急に強いサポートをかけてしまうことがあります。しかしその場合マスクや送気への不快感が強くなり忍容性がなくなってしまうことがあります。
NPPV導入時は急がば回れでしっかり説明しながらゆっくり導入することが大切であり、個人的に導入時に重要なことを記載します。

①本人にしっかり説明
これからマスクをつけて呼吸をサポートすること、ヘッドギアをつけたりマスクを密着させたりするが治療のためなので頑張ってください、というような声がけをします。

②低い設定から始める
いきなりマスクのベルトは締めず、まずは口の前に優しくあてがってあげましょう。その時PEEPを5前後の低い数値にしておき慣れさせてあげます。大丈夫そうなことを確認して声がけをしながらベルトを締めます。状態に応じてPEEPを少しずつ増やしていきますが、僕は心不全の時はPSはあまりかけないです。これも忍容性を意識していますが、純粋な心原性肺水腫なら換気サポートとしてのPSは不要であり、肥満低換気などがありCO2貯留してる場合のみ考慮します。しかしこの場合もPEEPのみで対応できることが多いです。

③導入しても気を抜かない
忍容性がありそうで一安心と気を抜いては行けません。治療効果が十分であれば速やかに呼吸努力が改善し見た目が良くなります。これまで一言しか話せなかった患者も短文が話せるようになり、血圧も落ち着いてくるでしょう。逆に呼吸努力が強い状態が続く場合には挿管が必要になることが予想されます。動脈ガス所見が改善していないことを見て挿管適応を検討することもありますが、まずは見た目が大切と思っています。
反応性がない場合は挿管を躊躇わないことが重要です。手をこまねいている間に状況が悪くなり挿管時のリスクが上昇してしまいます。

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