【Clinical Question】
CD腸炎は抗菌薬投与中の発熱・下痢で有名ですが、抗菌薬暴露がなくとも発症しうるのでしょうか。その場合の臨床的に疑うポイントを含めて解説します
【Answer】
結論から言うと、CD腸炎は直近の抗菌薬曝露がなくとも発症します。
典型的には抗菌薬投与中の発熱+水様下痢のプレゼンテーション(大体は抗菌薬投与から2週間以内に発症します)なのですが、そういう症例では診断に困らず、問題となるのは非典型的な症例と思います。
“Community-acquired CDI”というキーワードで検索すると、報告によりますが、JAMA 2013年の論文では、Community-acquired CDI(過去12週間で入院歴がないCDI)のうち30%程度で直近の抗菌薬曝露がなく、リスク因子としては高齢者、PPI使用などが挙げられています。実際に私が経験した症例でも、抗菌薬終了後に数週間あけて発症した症例や直近の抗菌薬投与歴がない症例は散見され、抗菌薬曝露がないからといってCD腸炎を除外しないことが重要と感じています。
それでは抗菌薬曝露の手がかりがないのに、どうやってCD腸炎を疑えばいいのかという点について説明します。まず一般論として、CD腸炎の診断に難渋するシチュエーションとしては、下記の2つがメインかなと思っています。
・CD腸炎の見逃しピットフォール
① 市中発症例や抗菌薬曝露に乏しい場合に鑑別にあがらない
② 重症例ではイレウス様になり下痢が目立たず鑑別にあがらない
個人的には、白血球増多と全結腸炎の所見が重要と考えています。
CD腸炎の重要な特徴として白血球異常高値(類白血病反応 Leukemoid reactionということもあります).Up to dateにも記載はありますが、CDIは一般的にWBC 15000を超えることが多く、”入院患者の原因不明な白血球増多ではCD腸炎を疑う”とさえ記載があります。実臨床の肌感覚としても、ほぼ全例で白血球増多が目立ち、重症例では特に高値となっています。白血球異常高値+腸炎ではCDを疑うというのは重要なポイントです。
次に、腸炎のパターンについても理解しておくと診断がスムーズになります。腸炎は大きく、小腸炎と大腸炎に分けられますが、CD腸炎は大腸炎の鑑別となります。
大腸炎をさらに分類すると、
① 回盲部-上行結腸:一般的な細菌性腸炎、結核
② 全結腸炎:病原性大腸菌、CDI、CMV、非感染(UCなど)
③ 下行結腸-S状結腸:虚血性腸炎
④ 直腸-肛門:直腸潰瘍、STI
に分類され、分布により鑑別が異なってきます。
CD腸炎は一般的に全結腸炎をきたし、画像でも結腸全体がパンパンになるため、そういう目で画像を見ると診断に有用と考えます。Fulminant CDIで下痢が目立たずとも、CTで全結腸炎の所見を認め、白血球異常高値であれば、CDチェックという感じで考えれば、診断できそうな気がしてきます。

【Take Home Message】
・直近の抗菌薬曝露に乏しい市中発症CDIに注意が必要
・白血球異常高値、全結腸炎の所見からCDIを疑うことが診断に重要
【参考文献】
JAMA Intern Med. 2013;173(14):1359. Community-acaquired CDIの疫学
Up to date
コメント